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オークションが終了致しました

2011年11月30日

オークションが終了して1週間が過ぎ、さまざまなメディアでオークションの報道を目にされた方もいらっしゃるかと思います。
このプロジェクトが、どのように日本人である私達の心に根付いていくのか、本当の真価が問われるのはこれからだと思います。

今日は、オークション会場での渡辺謙さんと村上によるスピーチを全文掲載してお届け致します。

おはようございます。
クリスティーズニューヨークの会場にお集りの皆様
朝早くから足を運んでいただき本当にありがとうございます。

そしてヴィデオの向うの、みなさん、ヨーロッパのみなさん、アジアの皆さんも、今晩は。

さて、本日、私がご紹介させて頂く「New Day」チャリティーオークションは今年の3月11日。まだ寒い頃の日本に起こった、大きな地震と、津波によるカタストロフへの救済チャリティーです。そして今も混乱の最中で暮らす東北地方の人々への賛助を皆様にお願いするモノがその中心ではあります。

しかし、それと同時に皆様にアイディアを頂きたいと思ったのです。
インディペンデントの核心部分のアイディアを。

今回の震災は決定的に第二次世界大戦敗戦後の日本の復興と経済の発展に癌細胞の起点のように、黒いシミを落としました。敗戦し、西欧の指導の元で形成された独立国家にある歪みに決定的な亀裂が入った事件でもありました。

ここまでの大きなスケールを持った震災ですが、根本的な問題解決を保留にし、責任転嫁と国民への情報隠蔽が目的でもあるかのように、国家の首相がコロコロ変わる。

現場は今も混乱の最中で、特にFUKUSHIMAの核爆発のその後の長期的な放射能への対策においては、手も足も出ない。さすがの『静かな民族日本人』もその場当たり的無計画な国家のあり方に大きな疑義を感じ始めました。

病いのきっかけとしての震災が癌細胞となり、その痛みがあまりにも苛烈で目覚めざるを得ない、と言ったところでしょうか。

つまり、今回のカタストロフへの皆様にお願い致します賛助とは物質的な賛助そのものと同時に、アイディアの処方箋を頂きたいのです。
インディペンデェントとは何なのか?という思考への処方箋を。

故に、私の友人である14人のアーティストと共に、そのレシピそのものとして作品をご提供頂きました。アーティストは常に、インディペンデントへの希求を信条としていますから。

そして、アートを愛する皆さんからは、社会、国家、個人のしがらみからも、インディペンデントを思考するきっかけを頂きたい。

このオークションのタイトルのNew Dayは震災直後にWEBサイトで立ち上げた、日本の若いアーティストを励ますスローガン、プロジェクトでした。まさに新しい夜明けを、と。しかし、本日この場においては、少しでも快癒に迎えるかもしれぬ、可能性を模索可能な気づきのきっかけを期待しているのです。

私自身、クリスティーズオーナーであるフランソワピノー様から頂いた震災時の慈しみのメールにアイディアを得て、この会は立ち上がりました。
クリスティーズのスタッフの皆様とは、本日この日に至るまで、多くの時間を割って何度も調整をしていただいたおかげで、このイベントが完成しました。

プレヴュースペースやプロジェクトに深く関わってくださった、ラリーガゴシアンさん、そしてガゴシアンのスタッフの皆様、においてもオークションやチャリティーの力学の本質的な部分のアイディアを頂きつつ、お手伝いいいただきました。

もちろん、作品をご提供頂いたアーティストの皆様
Zeng Fanzhi, Mark Grotjahn, Damien Hirst, Thomas Houseago, KAWS, Jeff Koons, Friedrich Kunath, Mr., Yoshitomo Nara, Gabriel Orozco, Anselm Reyle, Cindy Sherman, Aya Takano, Luc Tuymans.
からは、勇気の象徴を本日、頂いております。

皆さんに心から感謝を申し上げます。
本当にありがとう。

日本が江戸と言う鎖国を300年間続けた後に、西欧の帝国からの脅威を防ぐ手だてとして、近代国家を建国した。その時代に、日本国民個々人は、大きな動乱の中で木っ端のように翻弄されました。

本日、もうひとつ、紹介したいのはそんなそんな時代に日本で生まれた童話作家の詩です。

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」という詩です。

彼の詩を、渡辺謙さんに朗読してもらい、是非、インディペンデントのレシピを考えるきっかけを共有して頂ければと思います。

では、渡辺謙さん。
宜しくお願い致します。

皆様、おはようございます。

まず、この場を借りて、日本の震災救済活動をサポートして下さった方々に感謝を申し上げたいと思います。

震災が起こってから、8ヶ月がたちました。これからやって来る厳しい冬に備えて、被災地の方々は今も皆様のサポートを必要としています。今こそ、救済活動を行う必要があります。

アートとは、心の為の食料です。また、心の痛みを和らげるものです。
僕も俳優として、台詞を通して同じような事を行っています。
いつも被災者の心の近くにいられるように言葉を探しています。

本日朗読する詩は宮沢賢治による「雨二モマケズ」という詩です。
作者が生まれた年にも大きな津波が東北にやって来て、80年前の亡くなった年にも、東北に大きな地震がありました。

彼は農民でもあり、学者でもあり、詩人でもありました。
この詩は「最も辛い時でも、人間はそれを乗り越えられる」というささやかなメッセージを表現しています。

雨ニモマケズ

not losing to the rain
not losing to the wind
not losing to the snow nor to summer’s heat
with a strong body
unfettered by desire
never losing temper
cultivating a quiet joy
every day four bowls of brown rice
miso and some vegetables to eat
in everything
count yourself last and put others before you
watching and listening, and understanding
and never forgetting
in the shade of the woods of the pines of the fields
being in a little thatched hut
if there is a sick child to the east
going and nursing over them
if there is a tired mother to the west
going and shouldering her sheaf of rice
if there is someone near death to the south
going and saying there’s no need to be afraid
if there is a quarrel or a lawsuit to the north
telling them to leave off with such waste
when there’s drought, shedding tears of sympathy
when the summer’s cold, wandering upset
called a nobody by everyone
without being praised
without being blamed
such a person
I want to become

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

(2011年11月9日のスピーチより)

photo GION